エコマネーの生まれた背景

エコマネーは本当にごく最近提唱された新しい概念である。21世紀を目前にした今日、バブルな経済の崩壊、金融システムの 不安定など、貨幣経済は危機的な状況を迎えている。このような、すべてを貨幣で評価し、財・サービス等を交換する20世紀の 「貨幣経済」を補完するため、そして人と人との助け合いを基盤とする「ボランティア経済」と、その中で行われるボランティア 活動等を評価する新しい貨幣を創造するために、エコマネーは98年加藤敏春氏によって提唱されたのである。

エコマネーとは何か?

・新しいお金

エコマネーは、環境、文化、教育、コミュニティなど今の紙幣では価値を決めるのが難しいものをコミュニティのメンバーの相互の交換により多様な形で伝える手段である。こうした価値をエコマネーで交換する事により人と人の交流を促進し、結びつきを強める事を目標としている。こういったことからエコマネーは21世紀の「新しいお金」といえる。

     温かいお金

取引をする際に感謝の気持ちを表したい事がある。エコマネーはそういった人の気持ちを媒体し、従来の市場経済の尺度では計れない価値を、その多様性を評価した上で、流通されるものである。エコマネーの取引においては、サービス提供者の思いやりやサービス受領者の感謝の気持ちを反映できるように個別の取引ごとに相対で価格を決める。そういったことからエコマネーは「温かいお金」といえる。

エコマネーの仕組み

@   コミュニティでエコマネー運営団体を設立する。エコマネー運営団体とは、運営責任者と運営責任者から運営を委託された記録調整者により構成される簡素なネットワーク組織である。

A   エコマネーに参加希望の方は、運営団体にメンバーを登録する。

エコマネー運営団体は、自治体や町内会等の協力を得て、参加希望の方からサービスの提供と受領に関する希望を聴取して集計し、会報やインターネット上などでサービスメニューを作成する。サービスメニューとは、誰がどのようなサービスを提供し、誰が何を求めているかを知らせる事を目的としたものである。

@   個々あるいは複数のメンバーはそれを基にして相手方にコンタクトし、取引を開始する。

A   メンバー間の実際の取引は相対で行われ、両当事者により価格が決定される。直接当事者同士がバーターを行う必要がなく、参加メンバーの中でバーターを連鎖的に広げる

B   各メンバーの取引はその都度記録され、メンバーには毎月定期的にバランスシートが通知される

C   各メンバーはバランスシートを見ながらサービスをどの程度提供し、どの程度受けるかを判断する。

D   信頼に基づく“互酬的交換”であり一定期間後は振り出しに戻り、メンバー全体でみれば常にプラスマイナスゼロであり信用創造は起こらない。

エコマネーの活用方法

コミュニティ活動に関するサービスであるならば、ボランティアに限定されず、エコマネーの対象になる。

@     福祉・介護に関するもの

全国各地で深刻になっている介護問題を解決するために、介護保険制度の対象になっていないサービス(高齢者の話し相手になるといった心のケアサービス)を提供する。また介護保険制度の対象になっているサービスであっても、行政や民間の手の行き届かない場合は、行政や民間によるサービスを補完する。

A     環境に関するもの

ごみのリサイクル運動に住民が参加したり、道路端その他公共スペースに捨てられたごみを清掃する環境清掃サービスを提供する

B     高齢者へのパソコン知識の普及

商店街での空き店舗などを利用した高齢者向きのパソコン教室を開設し、ボランティアの協力を得てパソコンやインターネットの知識を教えるサービスを提供する。

C     都市部と山間部との住民の交流の促進

都市のコミュニティと田舎の山間部との住民同士の交流の促進をするために、都会の住民が自分の庭やベランダで苗木を育てて、その苗木を山間地に持っていって植林ボランティアサービスを提供する。

山間地の住民はこれに対してカルチャースクールを開設し、山村の文化を都会の住民に対して教える。

エコマネーの適用
1)介護福祉   介護保険制度の対象にならないサービスや介護保険制度の認定外になった要介護者や高齢者を対象にした住民相互扶助への適用

2)環境     市民が参加する町の清掃、ごみのリサイクル、更にはグランドワークなどに「エコマネー」を適用する。

3)まちづくり  商店街の活性化を中心とした「街づくり」を支援したボランティア活動や商店街自らのボランティア活動などに「エコマネー」を適応し、商店街と住民の繋がりを活性化させる。

4)交流     都会と山村の住民の交流促進等に適応する。また、若年層と高齢者のコミュニケーションの活性化に役立てる。

5)教育      高齢者を対象にしたパソコン教室、高齢者からの知恵や伝統の伝承などに適用する。

6)その他     肩たたき、お使いや留守番、育児の手伝いや料理教室、昔話の語りなど個人の特技や能力を社会に流通させ、自己能力の発揮や地域分野の創造・活性化に適用する。

エコマネーについての今後の展望

エコマネーを運営し普及させていくには、地域住民の「信頼関係」が重要になってくる。稼ぐのではなく、誰かに何かを提供したり、提供してもらったりする時の「対価」として支払ったり受け取ったりするものであり、そこには既存の競争原理では説明できないものである(メンバー全体でみれば常にプラスマイナスゼロ)。それは「相互扶助」の原理によってはじめて説明できるものである。

エコマネーのこれからとしては、電子マネーの活用がある。エコマネーは生活者が発行する通貨であり、取引をする生活者が行う。最近急速に発達しているデジタル技術はこのような相対での柔軟な値付けを可能にする。たとえば、インターネット上の情報のやり取りで「エコマネー」を流通させ将来的には、ICカードタイプのものに発展・拡大することが考える。

 そして、今後の展望としては「コミュニティ・ネットワーク」の構築がある。エコマネーが目指すものは、構成メンバーが信頼を共有できるコミュニティの創造であるが、そのコミュニティはリアルなコミュニティが基本であり、それにインターネットのバーチャルなコミュニティが投影した形をとる。インターネットの社会の浸透にともなって、バーチャルなコミュニティの可能性が議論されているが、コミュニティの基本は、人と人との触れ合い、出会いによる信頼の醸成であり、リアルなコミュニティを離れて信頼の醸成を行う事は不可能である。

 ただし、インターネットは本質的にオープンな性格を持ったコミュニケーション・メディアであり、このオープンなバーチャルリアルティをリアルなコミュニティに補完的に投影する事によって、開かれた新しいタイプのコミュニティを構築することができる。そこで必要となるのがインターネットを使った「コミュニティ・ネットワーク」である。

 そして「コミュニティ・ネットワーク」は、生活者の生活すべてをサポートする機能を持った「生活ポータルサイト」へと発展していく。「生活ポータルサイト」とは、コミュニティの生活者一人一人が「エコミュニティ」を構築するために様々な情報がデータベース化されていて、いつでも情報を引き出す事ができたり、それを活用して他者のコミュニケーション、交流のみならず、電子商取引ができる機能を有するものである。

 「生活ポータルサイト」は、生活者が必要とする医療、福祉、教育などの情報を引き出せる状況をつくることにより、一人一人の生活者に力を付与する(最近“エンパワーメント”と呼ばれる。)ばかりではなく、マネーを使った電子商取引のみならず、エコマネーを活用したボランティア経済の取引を行う事ができる。